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ダンス療法は身体を解き放ち自由に動かす体験を通じて、自身の思いや感情の動きに気付くように働き掛けます。身体を解き放つというのはどういうことでしょう? 長時間の式典やフライトが終わった時、身体を自由に動かせる喜びを実感する。誰もが経験するところです。
しかしながら、身体を自由に「動かせる」ことと実際に自由に「動かしている」ことは果たしてイコールでしょうか? 物理的な拘束は分かりやすいのですが、心の頑(かたく)なさが身体の動きのぎこちなさをもたらしていることに気付くのは難しいのです。
視点を変え、皆さんはご自分の身体のことをどのくらいご存知でしょう? 「自分の」身体なんだから分かっている、と思い込んでおられるのでは? 心と同様、実は自分の体を客観的に見ることは簡単ではありません。自分の頭や腕の重さは、人と話しているときの表情、仕草(しぐさ)、振る舞いは、等々…。
人は自分の思いを仕草で表そうとすることがあります。しかし思いと仕草の間にギャップがあっては、思いは相手に正確に伝わらないことになります。心が身体を、身体が心を知ることが必要になります。
ダンス療法は、自由な動きが許され受け入れられる、非日常的な場を提供します。リラックスし呼吸を整え、音楽や、時に小道具を用いて、身体の自然な動きを促します。そして、イメージを身体動作に置き換えたり、鳥になると言ったテーマを表現したり、自由気ままに動いたりという動作(表現)を、個人、あるいは集団で行います。
体格の似通った人とペアになり、もたれ合ったり、引っ張り合ったり、お互いに脱力(弛緩=しかん)した身体を転がしたり、持ち上げたりしたりすることも体験します。そうした一連の即興的な動作を通じて、身体を自由に動かす喜びを体験し、感情の動きや身体からのメッセージを感じ取ります。
また人の身体を使って(変な表現ですが)、自分の身体の重さ、動き、表情を客観的に眺めたり、人に身体を委ねたりすることも体験します。自らの身体に親しみ、居心地のいい身体の在り方を知るにつれ、おのずと心も解き放たれていきます。
ダンス療法は以上のように、踊りの美しさを求めるものでも、ステップを指導したりするものでもなく、医療、教育現場はもとより、心身障害児、高齢者、ターミナルケア領域に至るまで広く実践されています。
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