ホーム > アーツセラピー:園芸療法
園芸療法は植物を扱うという点によって、ほかの療法と大きく異なったものになります。植物は成長します。対象者は、土を運び種をまき、水やりをし、植え替え、収穫するといった一連の作業を通じて植物の一生にかかわることになります。
セラピストは対象者各人の能力や障害の程度に合わせて、その都度幾多の目標を設定してプログラムを作成します。しかも植物の種類によってはカイワレダイコンのように短期間で成長するものもあれば、収穫まで半年を要するものもあり、さらには季節によって使う植物は異なります。園芸療法のプログラムが多彩を極めるゆえんです。
草花の手触りや香りを楽しむことによって、視覚や聴覚に障害のある方も十分にその恩恵を享受することができます。また、車椅子(いす)使用の場合、作業しやすいように花壇の高さを調整したり、麻痺(まひ)の程度にあわせた補助具(例=スコップを持てない場合、前腕に固定する)を用いたりするなど、さまざまな工夫がなされています。
芸術療法は作品を作り上げるまでのプロセスを重視しますが、園芸療法はその典型であるといえます。「作品」が仕上がるまで焦らずに待たなければなりませんし、手入れをしなければ枯れてしまいます。長期間にわたる植物とのかかわりの中で、忍耐力、責任感、協調性が自然に培われていきます。そして待った分だけ仕上がったときの達成感、満足感は格別なものとなります。
効用の中で特筆すべきは生命を慈しむ心を育むことができるという点にあります。植物を育てる過程で、自分も周囲の環境(人とのかかわりも含め)の中ではぐくまれ生かされていることに気付くことが大きな目標になります。
命の源である緑に対する親和性は、私たちの記憶の奥深くに刻み込まれています。緑に回帰し緑を慈しむことは、取りもなおさず生命全体を、周囲の人を、そして自分自身を慈しむことにつながるのです。
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